連載企画【BeWithインタビュー】北九州で若者・学生を支えるNPO法人BeWith(ビーウィズ)の活動と想い|代表 坂本規久子

── NPO法人BeWithが生まれた理由と、若者に寄り添う居場所づくり ──
北九州市小倉北区金田のラーニングスペースCANDLEを拠点に活動する
NPO法人 BeWith(ビーウィズ)。
学生や若者が安心して過ごせる居場所を目指し、日々活動を続けています。
本インタビューでは、
BeWithを立ち上げた背景や活動に込めた想い、
そして日々の関わりの中で生まれた、たくさんのエピソードを
代表・坂本規久子が語ります。
誰かの「やってみたい」が、ここから始まる。
BeWithの原点を、ぜひご覧ください。

BeWithを立ち上げたきっかけ
息子の進路に悩んだ経験から

LEARNINGSPACECANDLE
(北九州市小倉北区金田)
Q:BeWithを立ち上げたきっかけを教えてください
息子が進学校に通っていたのですが、高校3年生のときに急に
「就職したい」と言い出したんです。
学校は進学先の相談しか乗ってくれず、
どうしたらいいのか進路に悩んでいたときに、
親も子どもも頼れるところがないと感じました。
そんなとき、親でも学校の先生でもない
「第三者の大人」に話を聞いてもらったことをきっかけに、
進路を決めることができたんです。
第三者の大人との出会い
親でも先生でもない存在の大切さ

Q:第三者の大人というのは、どういう方ですか?
息子が高校生のとき、イベントの手伝いをしたことがあって、
そのときのイベント会社の社長さんでした。
当時35〜36歳くらいだったと思います。
その方が「自分が話を聞こうか?」と声をかけてくれて、
息子の話を聞いてくれました。
息子から聞いた話を私に伝えてくれて、
逆に私の気持ちも息子に伝えてくれる。
まるで通訳のような存在でした。
お互いに
「なんでわかってくれないの?」
となっていたところに、別の大人が入ることで、
「ごめんね、言い過ぎた」
と、客観的に解決に向けて話し合えるようになり、
とても救われました。
でも、こういう相談って行政に言ってもなかなか乗ってもらえなくて。
ハローワークも「対象外」と言われましたし、
学校も「進学しないなら自分で調べてください」という感じで……。
信頼できて、何かあったときに相談できる場を、
いつか作れたらいいな。
それが、一つ目のきっかけです。
もう一つの大きなきっかけ
相談する場のなかった若者の出来事
もう一つのきっかけは、
息子の友達のお兄さんの出来事です。
大学進学を機に遠方で一人暮らしをしていたのですが、
ある日突然、自ら命を絶ってしまいました。
勉強もスポーツもできて、優しくて、しっかりした、
本当にいいお子さんでした。
突発的なことだったのか、何か悩みがあったのかは分かりません。
でも、いわゆる「普通の子」、
きちんと日常生活を送れている子ほど、
相談できる場所がないのかもしれない、と思いました。
いのちの電話や行政の相談窓口もありますが、
若い人って、なかなかそこには電話しないですよね。
そうなる前の過程で、
誰かに寄り添ってもらえる場所や、
話を聞いてもらえる場所があれば──。
その子は、もしかしたら違う道を選べたのかな……と、
どうしても考えてしまって。

自習室が閉鎖され居場所のなくなった学生たちへ居場所の提供と、繋がりづくりを行った
地域に、ほっとできる居場所を

私は個人事業で民間学童クラブの代表をしています。
学童に通っている子どもたちも、
成長したら、こういう時期がきっと来るかもしれない。
そんなときに、
- 「あそこに行けば相談できる」
- 「話を聞いてもらえる」
- 「話さなくても、いるだけでほっとできる」
そんな場所が地域に作れたらいいな、と思いました。
来てくれた子たちが
「よし、また頑張ろう」と思える。
「しんどいな」と感じたときに、
命を絶ったり、つらい選択をするのではなく、
ほかの選択肢を考えられる。
そんな、あたたかい場所を作りたいと思っています。
支援のはざまにいる子たちへ
見えにくい悩みを抱える若者たち

Q:いわゆる障害があったり、支援を受けている子ではない子たちを支援したい、という想いがあったのですね?
そうですね。
ひきこもりだったり、
すでに支援を受けているような
「課題が見えやすい子」には、
行政や国の支援もたくさんあると思います。
でも、そこから抜け落ちてしまっている、
元気に日常生活を送れている子たち。
はたから見ると何の問題もなさそうな子こそ、
それぞれ悩みを抱えているし、
「何もないから支援しなくていい」わけではないと思っています。
迷ったとき、誰かに相談したいとき、
特に若い子たちは
「どこに相談したらいいのかわからない」ことも多い。
だからこそ、
気軽に行きやすい場所をつくりたい。
そんな想いがあります。
若者を取り巻く社会への想い
大学生や若い世代の子って、
世の中のことをまだよく分からない状態なのに、
急に周りから「なんでもできるでしょ」と扱われる。
親からも
「もう一人前でしょ」
「自分で考えられるでしょ」
と、だんだん手を放されてしまう。
でも、そういう子たちにこそ、
大人が
「安心して夢を追いかけていいよ」
と言ってあげられる存在が、もっといたらいいなと思っています。
その子たちが頑張らないと、社会は回っていかない。
「頑張ろう!」と思っている子たちが、
ちゃんと頑張れる世の中の土壌を作ること。
それが、大人の役目だと思っています。

BeWithが大切にしていること
「強制しない」関わり方
BeWithが大切にしていることを教えてください。
「強制しないこと」です。何事も。
やりたい時には全力で応援する。
来たい時には来てくれていい。
でも、
「こなきゃいけない」
「やらなきゃいけない」
ではなく、ゆるい感じを大事にしています。
もう一つは、
お互いに認め合うこと。否定しないこと。
どう関わればいいか戸惑ってしまう人がいても、
大人が当たり前に接していることで、
若い世代にも伝わっていくと思っています。

『面白アイデア研究所』
一見変わったイベントも真剣に。
立ち止まったときに寄り添う場所
めちゃくちゃ頑張っているときは、
別に来なくていい。
ふと疲れたなと思ったとき。
自分がどうしたらいいかわからなくなったとき。
そういう時にこそ、来てほしい。
「行かないと仲間外れになる」
「次に来たら分からなくなる」
そんな不安は持たせないようにしています。

BeWithの活動について
ラーニングスペースCANDLEの運営

Q:BeWithはどんな活動をされているんですか?
活動拠点として、
LEARNING SPACE CANDLE(北九州市小倉北区金田)
を運営しています。
- 中学生以上の学生:無料の自習室
- 大人:1時間500円〜のコワーキングスペース
- レンタルスペース・キッチンの有料利用
大人の方の利用料が、
若者たちの活動を支援する仕組みになっています。
縁日食堂・チャレンジカフェなどの取り組み

月に一回、毎月9日に
「縁日食堂」を開催しています。
テーマを決めず、
大学生・若者と大人が交流する場です。
- 大人:2,000円
- 学生:500円
大学生の「やってみたい!」をきっかけに、チャレンジカフェ(大学生が夜cafeをオープン)
の取り組みも行ってきました。
今後は、こうした
チャレンジを応援する支援に、
より力を入れていきたいと考えています。
印象に残っているエピソード
高校生たちからの、思いがけない贈り物
Q:活動をしていて、印象に残ったことはありますか?
いくつかあるんですが……。
ひとつ目は、地域に住む高校生の男の子たちの話です。
6〜7人くらいで、毎日受験勉強の場所として使ってくれていた子たちがいました。
受験が終わったあと、みんな揃って
「受かりました!」
と報告を兼ねて、大掃除をしに来てくれたんです。
たくさんのお菓子の差し入れを持ってきて、
窓を拭いたり、床を磨いたり、一生懸命ピカピカに掃除してくれて。
その姿を見て、感動して泣いてしまいました。
進路に悩む高校3年生の女の子
もうひとつは、
よく勉強しに来てくれていた女の子の話です。
いつもは元気な子だったのですが、
高校3年生の2月の終わり頃、
荷物を置いた瞬間に泣き出してしまって。
時期的に受験のことかなと思い、
「どうしたの?」と声をかけると、
数日後に国立大学の入試がある、と。
でも
「自分はそこには行きたくない」
と言うんです。
周囲の期待と、自分の本音のはざまで
お母さんの地元にある大学で、
おじいちゃんもおばあちゃんも両親も、
合格を楽しみにしてくれている。
学校の先生も勧めている。
みんなが期待してくれているから、
合格したら絶対にそこに行かなければいけない。
でも本当は、
その前に受けた私立大学に行きたい。
どうしたらいいかわからなくて、
勉強も手につかず、成績もどんどん落ちていく。
周りの友達はすごく頑張っているのに、
このままじゃ、自分は何をしたらいいかわからない。
そう言って、大泣きしていました。
「ちゃんと伝えていい」と背中を押す
私はこう話しました。
「私も息子がいるからわかるけど、
ここまで真剣に自分の進路を考えているなら、
絶対に伝えたほうがいい」
「私がお母さんだったら、
ちゃんと話を聞きたい。
逆に聞いていなかったら後悔する」
「だから、絶対に伝えて」
話すのが難しければ、
手紙にしてもいいんじゃない?
と伝えました。
彼女は手紙にまとめたあと、
泣き疲れてソファで2時間ほど眠り、
その日は帰っていきました。
自分の選択を選べた、その後
10日ほど経って、また来てくれて。
「無事に受験が終わりました」
国立大学には合格したけれど、
お母さんと話をして、
自分が行きたかった学校に進めることになったそうです。
「あの時、話ができて本当に良かったです」
そう教えてくれました。
学び続ける理由
キャリアコンサルタント資格を取ろうと思ったきっかけ
この出来事がきっかけで、
キャリアコンサルタント(国家資格)の資格を取ろうと決めました。
私は大人として相談には乗ったけれど、
もしかしたら、その子の人生が
大きく変わったかもしれない。
進路によって、人生は本当に大きく変わります。
だからこそ、
自分がちゃんと自信を持って話を聴けるようになるために、
知識も、道筋を示す力も必要だと思いました。
大人になってからの大学での学び
Q:大学でも学ばれていましたよね?
学童やNPOをやっていく中で、
地域とどう関わっていくか。
そのやり方や知識が、
自分には足りていないと感じたんです。
それを学びたいと思い、
北九州市立大学の
「大人のための教育プログラム(i-Design)」に通いました。
女子大生として(笑)、
キャンパスに通い、
レポートを書き、授業を受ける。
今どきの大学生の姿を間近で見て、
大学生の大変さや気持ちがよく分かりました。
若い人たちも、本当にしっかり勉強している。
学びに行って、本当に良かったです。
BeWithに込めた想い
「相談していいんだ」と伝えたい
まず伝えたいのは、
「相談していいんだ」ということ。
いくつになっても、
どこでも、誰にでも、
ずっと相談していい。
「助けて」って言っていいんだよ、
ということを知ってほしいと思っています。
大人も迷いながら生きている
就職して、違う場所に行ったときに、
「大人って話を聞いてくれない」
と思ってほしくない。
大人も迷っているし、
弱いところもある。
そのうえで、
素直に相談できる力を、
ここで少しずつ培っていってもらえたら。
何気ない会話から生まれる信頼
縁日食堂やBeWithの活動を通して、
「はじめまして」から始まり、
趣味の話をしたり、
とりとめのない話をしたりしながら、
少しずつ仲良くなっていく。
その中で
「大人と気軽に話していいんだ」
と感じてもらえたら嬉しいです。
次の場所へ進むための、通過点として
BeWithに、とどまってほしいわけではありません。
ここで心が少しあたたかくなって、
次の場所で、また頑張ってくれたらいい。
人は、してもらったことや、
経験がないと、
人にしてあげられないと思うんです。
「嬉しかったな」
「あの時の言葉、よかったな」
その記憶を持って、
また別の場所で、誰かに返していく。
やさしさが、広がっていったらいいなと思っています。
BeWithに集う大人たち
志を共にする、多様な大人たち
――BeWithにいる大人たちは、どんな方たちなんですか?
学生さんを応援したい、
若者と話をしたい。
そんなBeWithの考えを理解し、
志を共にしてくれる大人たちがいます。
趣旨を理解したうえで集まってくれているので、
安心できる場になっていると思います。
IT関係、画家、住職、中小企業の社長、議員、主婦、経営者……。
本当に、いろいろな人がいます。
「やってみよう」と言ってくれる大人しかいない
若い人の
「やってみたい!」
に対して、
「じゃあ、やってみようよ!」
そう言ってくれる大人しかいない。
それが、BeWithにいる大人たちです。
「やってみたい!」が生まれる場所
ピザ窯が生まれたプレゼン大会
縁日食堂で印象に残っているのが、
ピザ窯のエピソードです。
ピザが大好きな大学生がいて、
縁日食堂でピザを作ってくれました。
生地から発酵させ、
フライパンで焼いたピザを、
みんなで「おいしいね!」と言いながら食べていて。
そのとき、
「本当はピザ窯があったら、
もっと本格的なピザが焼けるんです」
と話してくれて。
想いを伝えると、応援が集まる
ピザ窯は高額で、
自分では買えない。
そこで、縁日食堂でプレゼン大会をしました。
なぜピザ窯がほしいのか。
おいしいピザを、みんなに食べてほしい。
ピザの魅力を伝えたい。
その想いを、熱く語ってくれました。
その場にいた大人たちが、
「それなら力を貸せるよ」
と、お金を出し合い、
ピザ窯をプレゼントしました。
応援は、次の場所へつながっていく
次の縁日食堂では、
そのピザ窯でピザを焼き、披露してくれました。
その後、大学生は就職し、
ピザ窯を就職先に持っていったそうです(笑)。
今も、いろいろな場所で
ピザを焼いているみたいです。
応援される側から、応援する側へ
ほかにも、
アイドルのオーディションを受けたい学生が
プレゼンをして、旅費を集めたこともあります。
応援してもらった子たちが、
またどこかで、
誰かを応援する側になっていく。
そんなつながりが生まれたらいいな、
と思っています。
BeWithが目指す未来 ガクチカ(学生の頃力を入れた事)支援
日常的につながれる拠点へ
今は、縁日食堂の日には人が集まりますが、
それ以外の日は、少しバラバラな印象もあります。
イベントのときだけでなく、
普段からつながり合える場所になれたら。
大学生や若者が
「こんなことをやりたい」
「今、こんなことをやっています」
と発信し、
それに共感した大人や企業が
協力・協賛する。
そんな拠点になれたらいいなと思っています。
ガクチカ応援(学生の頃力を入れた事)が出来たらいいねって、仲間たちと話しています。
若者と企業が出会う場所として
企業さんから、
「若い人の就職希望が少ない」
という声もよく聞きます。
BeWithが、
学生やチャレンジしたい若者の集まる場になることで、
企業の方が
「若い人たちは何を考えているのか」
を知れる場になれたら、お互いいいのかなと思います。
無理のない協力関係を地域で
たとえば、
カフェをやりたい若者と食材を提供できる企業さんが
Win-Winな関係でお互いに力を提供しあって
やってみたい!に挑戦するようなことが出来たら素敵ですよね。
そんな関係が、地域の中で育っていってほしいと思っています。
年齢を問わないチャレンジの場へ
先日就労支援施設の方から、
こんな話を聞きました。
仕事はできるけれど、
心や体の疲れから、
いきなり就職するのは難しい方がいる。
そういった方が、
ノンストレスで挑戦できる場としても、
BeWithを活用してもらえたら。
ゆくゆくは若者に限らず、
年齢に関係なく、
幅広い方のチャレンジを応援したいです。
シニア世代のチャレンジも応援
おしゃべりカフェの取り組み
――シニアの方のチャレンジカフェもされているんですよね?
はい。
第1・第3木曜日に
レンタルスペースとキッチンを利用して「おしゃべりカフェ」を開催されています。
ずっとカフェをやってみたかった、という地域のシニアの方が、
手作りの食事やパンを提供してくださっています。
「認知症予防になるね」
「ここでみんなと会えるのが楽しみ」
毎回、生き生きとした姿が印象的です。
代表自身の「やってみたい」
――ご自身の「やってみたい」ことはありますか?
いろいろありますが……
事業のことは、ちょっとまだ言えないこともあるので…
それ以外だと、
来年こそは、ゴルフですね。
ゴルフバッグをいただいたので、
練習して、ラウンドに出たいと思っています。
最後に若者へ
「ただいま」「おかえり」が言える場所に
――最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。
CANDLEが、
「ただいま」
「おかえり」
が言い合える場所になったらいいなと思っています。
ぜひ、気軽に遊びに来てください。
看板がちょっと分かりづらくて、
入りにくいかもしれませんが……
看板を作ってくれる人、募集しています(笑)。
キャリアコンサルタントの資格を活かした相談もできますし、
いろいろな大人がいます。
困っていること、話したいことがあれば、
気軽に声をかけてください。
インタビューを終えて
温かい想いがあふれるインタビューとなりました。
学生や若者を支援したいという、
やさしい気持ちのルーツが、
これまでの経験や、一つひとつのエピソードから
丁寧に伝わってきます。
BeWith、そして
ラーニングスペースCANDLEは、
世代を超えて、
誰かの迷いや不安にそっと寄り添い、
「やってみたい」をつないでいく場所。
この場所から、
また新しい一歩が生まれることを願っています。

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